第3章 粉砕ブレーキ!【Ruggie】
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監督生の戦いは、これからだった。
放課後。
まずはミステリーショップへ寄って大量の粉、バター、砂糖、卵、牛乳、油…
これらを買ってせっせと寮へ運ぶ。
1度じゃ運びきれないので、二往復。
「ふな〜…疲れたんだゾ」
「もうちょっと頑張って、グリム。ツナ缶は弾んだでしょ?」
「アレっぽっちじゃ割に合わねぇんだゾ!オレ様に手伝わせる気なら、もうあと二缶は追加しろ!」
「わかったわかった、だから協力して」
「ケッ。オレ様の分もちゃんと作るんだゾ。」
「もちろんよ」
材料をすべて運び終えたらキッチンへ。
オンボロ寮のゴースト達も総動員して、計量カップに計りとる。
「ゴーストたちは計量、グリムは混ぜる係。」
監督生が指示を出し、一同は作業に取り掛かる。
…そう。
ラギーの為にドーナツ100個揚げるつもりなのだ。
トレイ先輩に教えてもらったレシピのメモを見る。
監督生は本気の目だった。
オンボロ寮に砂糖と油の香りが漂う。
匂いだけで幸せになれる。
材料を練って、伸ばして型抜きをして、揚げる。
この作業を繰り返す。
グリムがつまみ食いをするだろうから、材料は多めにある。
監督生は汗を流しながら次々とドーナツを揚げた。
先輩の彼女になるには、幾つ揚げればいいかしら?なんて。
この10日間、ラギー先輩は私に真剣に勉強を教えてくれた。
分からなくても見捨てないし、一緒に考えてくれた。
ドーナツ100個なんて安いものだと思った。
ラギー先輩と急接近するつもりが、緊張してしまって全然何もできなかった。
だから足掻きたいの。
往生際が悪くありたいのよ。
好きな人の為にブレーキも狂っちゃう時の自分が好きなの。
笑顔でちゃんとお礼を伝えたい。
今度は私が、サバナクロー寮に行く番。