第15章 空腹スカベンジャー!【Ruggie】
「あの、ラギー先輩。聞いてもいいですか」
「え、何、なんスか改まって」
監督生はずっと気になっていたことがあった。
「その。スラムの暮らしって、どんな感じなんですか。」
ラギーは食べ物やお金に関してかなりケチだ。
そのルーツは言うまでもなく、彼がナイトレイブンカレッジに入学する前はスラム街で生きていたことにある。
人の事情に無闇に首を突っ込むものではないし、知りたいと思うこと自体が不謹慎かも知れない。
だけど、スラム育ちのハイエナが名門ナイトレイブンカレッジで授業を受けていることは明らかに異様だ。
監督生は興味があった。
どうやってここまで這い上がったのか。
きっと修羅の道を歩いてきたに違いないのだ。
歯の隙間から漏れ出すみたいに笑い、冗談を言ったり自分をからかったりする彼が時折見せる日影の様な表情が気になる。
"捕食者"としての彼の過去と生き様を、どうしても一度聞いてみたかった。
「どんなって…聞きたい?」
ニッ、と笑う顔は昔図鑑で見たブチハイエナの顔とおんなじであった。
「聞きたいです」
彼女が真剣な顔をして頷くので、ラギーは相変わらず変な子と思った。
「そうッスね〜。例えば?」
「えっと、向こうではご飯は何を食べていましたか」
「何でも食うッス。」
「何でも?」
「そう、腐っててもね」
「えっ」
ラギーはスマホを取り出して監督生に1枚の画像を見せた。
「これ。なんだと思う?」
「え…?山?にしても随分カラフルですね」
黒や灰色のカタマリが積み重なってできた山に、緑やオレンジや青などの極彩色が混ざっていてモザイクのように見える。
その上に人が登っていて、山の中に手を突っ込んでいる人もいる。
「山は山なんスけど、普通の山とは全然違うッス。これゴミ山だから」
「ゴミ山?!」
画像をズームして見せる。
確かによく見れば、黒や灰色は何かの燃えたあとのくずであり、カラフルなのは衣服やプラスチックなどの色だった。