第14章 略奪ライアー!【Trey】
・・・
【現在】
「で?今日も"アレ"使ったの?」
「ん?まあな。」
「トレイくんってば〜〜。ウケる。程々にしなよ?」
ケイトはマジカメのタイムラインを引っ張って、次々といいねを押す作業に入る。
「もうそろそろ必要ないんじゃない?監督生ちゃんトレイくんのこと好きっぽいし。」
ケイトの目から見て、トレイは首尾よくやっているようだった。
これぞ『嘘から出たまこと』というやつだろうなぁと思う。
嘘も貫けば真となる。
「トレイくんじゃないとできないよねー。監督生ちゃんの感情をいちいち上書きして、ちょっとずつ自分の方へ傾かせるなんてさー。」
「まあ、たまたまな。」
「監督生ちゃんが彼ピのこと思い出せば思い出すほど、トレイくんには都合いいじゃん。プラスの感情を全部横取りしちゃえばいい訳だし。」
「なかなか骨は折れるけどな。」
そう言って笑う顔からは苦労を感じさせない。どころか楽しそうですらある。
あらゆるリスクを検討し、先回りして策を講じ状況に合わせて臨機応変に対応する。
そうして"普通"を作り上げる。
その辺は、トレイが最も得意とするところだ。
それに、彼は物事の過程にはこだわらない。
結果が良ければあとはどうでもいいのだろう。
「すごいよねぇ。ホント、地道な努力ってやつ?」
「おお、なんだ、急に褒めるじゃないか」
「心配してんの。トレイくんが体調崩すなんてチョー珍しいし。反動が来たんじゃない?」
「…かもな」
まー、トレイくんが楽しそうだからいいけどさ。とスマホを閉じて伸びをする。
どうせトレイは止めても無駄だ。意外と頑固だから。
監督生ちゃんも悪い先輩に目をつけられちゃったね、としか思わなかった。
「じゃ、そろそろオレ行くね。おやすみ」
「待てケイト」
「んー?」
「監督生に言っただろう、俺が風邪だって」
「いや言ったよ。だってトレイくんこんな絶好のチャンスなのにカッコつけて隠そうとするんだもん」
「はー…」
「結果オーライってヤツっしょ?」
「まあ。」