第13章 夢枕ララバイ!【Riddle】
「さあ、問題だよ」
歌が終わって、監督生はこれが謎かけであるのを忘れていたことに気づいた。
リドルの歌が素敵で、聞き入っていたので。
「ハンプティ・ダンプティの正体はなんだと思う?」
「分かりません…」
「歌詞をよく思い出して」
明るいメロディとは裏腹になんだか不気味な歌詞だった。
ハンプティ・ダンプティが塀から落っこちて、誰も元に戻せなくなった。そんなストーリーを語った歌。
「リドル先輩。ハンプティ・ダンプティは、助からないの?」
「え?」
リドルは彼女を見て意外そうな顔をし、それから可笑しそうに笑った。
「どうして笑うんです」
「ボクも同じことを言ったよ」
「?」
「初めてこの歌を歌ってもらった時。ボクもキミと同じように質問したんだ。ハンプティ・ダンプティは助からないの?ってね。ふふ」
「そんなにおかしいですか?」
「ああ、可笑しいね。答えを知っていると」
因みにこの謎かけの答えは『卵』だが、暫くは答えを教えないでおこう、とリドルは思った。
奇妙な童謡の歌詞も考えようによっては、面白可笑しくなる。
それがまだ分からなかった幼い頃の自分に、監督生が重なる。
何故笑っているのか分からずもどかしい表情をしているのが、子どもっぽくて可愛かった。
「では宿題にしよう。期限は明日まで。よく考えておいて」
「えぇ、教えてくれないんですか」
「教えない。ほら、早く寝ないとハンプティ・ダンプティになってしまうよ」
「え!」
「こう言って親は子供を寝かしつけるんだ」
目まぐるしく変わる監督生の表情が面白くて、リドルは口元を抑えて笑った。
「どうしてキミはそんなに面白いんだろうね」
「先輩、私をからかってる」
「するのはキミにだけさ」
「嬉しくないわ」
「そう?」