第13章 夢枕ララバイ!【Riddle】
監督生は幾らか気持ちがほぐれてきて、布団からちょこっと手を出したまま小さなあくびをした。
手で口を覆うのをうっかり忘れてしまって、いけないいけない、とリドルに見えないよう顔を横にした。
「…ボクが小さい頃、お母様がこうして歌ってくれた。」
監督生の手にパタ、パタとゆったりとしたリズムで自分の手を重ねて。
赤ちゃんをあやす時のようにリドルは"ハッシュリトルベイビー"を歌う。(アメリカ南部州に伝わるララバイ。愛する我が子のためなら何でも買ってあげたい親心を歌った歌。)
何かとても大切なものを守るように、慈しむように。
少年の声が優しく子守歌を奏でる。
それはずっと聞いていたくなるくらい甘くて、夢の世界まで一緒についてきてくれるような、安心感のある声。
不思議なことに、リドルの歌声を聞くと緩やかな眠気がやって来て監督生の瞼はうつらうつらと下がり始める。
歌いながら、リドルは監督生の鼻先にチョン、と触れる。
それをされると子供の頃に戻ったみたいな気持ちになって、監督生はしっとりと目を閉じた。
「眠いかい?」
「ねむい、です」
「そう。眠れそう?」
「んー…」
段々監督生は「ん」とか欠伸でしか返事ができなくなってきて、ウトウトし始めた。
リドルはくすくす笑って、監督生の頬を指で撫でた。
触れたら壊れてしまいそうだから、そっと優しく。
「バラは赤い。スミレは青い。」
いつかお母様に読んでもらった、詩を口ずさむ。
「お砂糖は甘くて、そしてキミも…」
キミも、
「きみも…?」
「さあ、なんだろうね」
寝惚けた監督生の髪が扇のように広がっている。
指で梳くように撫でていれば、彼女はいつの間にかコトン、と眠ってしまったのだった。