第5章 翼をもたない小鳥はずっと
それからのリアの様子は酷いものだった。
毎日ベッドで同じ姿勢のまま動かない。
視点が合っておらず、一言も話さない。
使用人達も気味が悪いとあまり部屋に近づきがらなくなっていた。
何も考えず、何もせず。
生きているのかさえ自分でもわからなかった。
あの日から数年が経った。
リアはロイが死んだ時と同じ年齢になっていた。
それからの世界は真っ暗だった。
ロイを失った両親は酒に溺れるようになり、仕事も上手くいかなくなっていた。
家の衰退に比例するように、使用人が次々といなくなっている。
しかしリアにはそんなことどうでもよかった。
今日もまた動かない。誰とも話さず、天井を見上げたままただ息をする。
トントン
ノックが聞こえるが、リアは扉に目を向けるだけで表情一つ変えない。
使用人が扉を開けると、訪ねてきたのは久しぶりに見る顔。
入ってきたのは明らかにやつれ、使用人に支えられて歩く父親だった。
「リア、お前に縁談話がある。相手は60を超えているそうだがいい家柄の方だ。若い女を妻にしたいとうちに声がかかった。
またとないチャンスだ。うちが持ち直すにはこの縁談にかけるしかない。わかっているな。お前に全てかかっているんだ。」
リアは一通り聞くと、また視線を天井へと戻した。
馬鹿らしい。
今まで私の存在を否定して閉じ込めてきたくせに、最後は娘にすがるのか。
リアから何も返事がないことに、次第に赤くなる父親の顔が横目に見えた。
「…聞いているのか!このゴミくずが!」
頬への衝撃と強い痛みで我にかえる。
自分は今殴られたのか…。
それでもなお何も感じない自分は本当に頭がおかしくなったのかもしれない。
ふふっ
あぁ、不思議と笑いがこみ上げてくる。