第5章 翼をもたない小鳥はずっと
「ふふっ」
「何が可笑しい。狂ったか。」
「失礼。お父様がゴミくずに縁談をお持ちになられる無様な姿が滑稽に思えたのです。」
「その口縫い付けてやりたいところだが、嫁入り前の体に傷をつけて返品されても困るからな。明日仲人をしてくださる調査兵がくる。調査兵とはいえ分隊長らしいからくれぐれも失礼のないようにな。」
部屋を出ていく父の小さな背中が、落ちぶれた家の今の姿そのもののようだ。
家事も出来ない、自室から出たこともなく世間を知らない。
歩けず、普段動かさない下半身には筋肉と呼べるものは欠片もない。
そんな女を何故嫁にしたいと思うのだろうか。
ああ、と1つ思いつくと、また笑えてきた。
お呼びなのは私ではなく若い女の身体か。
こんなやせ細った体でも興奮する人がいるのか。
私にも唯一価値があったのか。
逃げることも出来ないなんて確かに好都合なのかもしれない。
ああ…きもちわるい。
そう思うと急に涙が出てきた。
なぜ泣くの私。
別にいいじゃないか。
籠と主人が変わるだけだ。
どうせ今までと変わらない。
…お兄ちゃん。
私にはやっぱり動ける足なんていらないよ。
鳥籠の中では翼は必要ないんだ。
どうせ飛ぶ空すら無いんだから。