第3章 放浪記
話が色々と進むものだからダダンの目が回っていた。ガープ中将が話すと「こいつ連れてく」と修飾語が全くなくて理解出来なそうだったから、私が簡単に『おじいちゃんに偉大なる航路に連れてってもらう』と話したら両肩をガシッと掴まれてものすごい勢いで反対された。
「ただでさえあんな辛ェ思いをしたのにあの場所に戻るのかよ!!」
『違うよ、海軍に戻るんじゃない。
お墓参り…してこようと思って。』
「…!!」
誰と言わずとも伝わる。
あの日、あの場で私は彼の死際を一瞬だけ見れた。しかし、花を手向けることなどできる余裕はなく、ただ逃げるしか出来なかった。
『心のどこかでまだ信じられてなかったりするんだ。
ちゃんと向き合いたいの。』
それを伝えるとダダンは力を抜いて私の両肩から手を離した。
「まァ、そんなわけじゃ。こいつ貰うぞ」
「…荷物はどうすんだお前、」
『私は刀と銃と帽子さえあれば平気よ。
食料ならそこらへんの魚でも捕らえて食べるし』
もとからここに着いた時に持ってきた荷物なんてほとんどなかった。強いて言えば海賊から奪った宝石を換金して得た食料だけ。それなんてとっくのとうに無くなっている。
私の準備はダダンや、世話を焼いてくれた人達にお別れを言うことだった。
『ここにもう心残りはない。
まだまだ長生きしてくれそうな人たちしかいなそうだし、私の心配は余計だったわね。
もう行けます、ガープ中将。』
「おじいちゃんと呼べ!!!
ついでに敬語もいらんわい!!」
『あ、ごめんね、おじいちゃん…
じゃあ、もう行くわ。
マキノさんも突然で申し訳ないけど』
「平気よ!気をつけていってらっしゃい!」
『うん、
ダダンもお世話になったし、ご迷惑おかけしました。ありがとうって、皆にも伝えておいて』
「…ハァ、
今に始まったことじゃねェだろうが」
マキノさんとは対照的にダダンは呆れたような目で私を見た。
見送りには来ないでいいと伝え、酒場で別れた。
ガープ中将が後を追って久しぶりの軍艦へ登る。
さすがガープ中将の部下というべきか、皆どこか抜けていて
「をもてなしてやれ、
あ、本部に報告はナシの方向で」
というと「「ええええ!!?」」と言いながらも受け入れてくれた。
気を取り直して覚悟を決める。
『(今から会いに行くよ…エース)』