第3章 放浪記
「まだ決まっとらん。」
『へ…』
ガープ中将から放たれた予想外の言葉に思わず腑抜けた声が出てしまった。
ジンベエさんから聞いた話では、黒ひげは私の素性をバラしたらしい。
「海賊王の血は根絶やしに」
という考えのサカザキ大将は私を放っておかないだろう。
ガープ中将曰く
「は裏切った行動をしていない」と、今では大目付となったセンゴクさん達の説得により一時保留になったらしい。
それでもエースは海賊王の息子だから見せしめに公開処刑をされた。
私が呑気にこんな所で暮らしていいはずがない。
さらに、センゴクさんが元帥を辞めた今、この状況が一転してもおかしくはないのだ。
「お前はよう頑張ったわい、」
その一言にひどく胸を締め付けられる思いがした。
『(でも何も助けられなかった。)』
そんな私の気持ちとは裏腹に、バリバリ、と煎餅を頬張る。
そんな少々能天気な姿を懐かしく感じる。
そう考える時点でもう8ヶ月も顔を合わせてないんだな、と実感させられた。
すると、急に口の動きが止まり、煎餅を飲み込むと少し間を開けて口を開いた。が、何か話しづらそうにしている。
『どうかしましたか?』
「いやァ…
が連れてきた部下共は皆倒れた状態で見つかった。
恐らく、いや、確実に黒ひげの仕業じゃろうな」
その言葉に私も黙り込む。
軍艦での戦闘時から今まで嫌な予感はしていたから…
それでも言葉にされると強く実感する。
「責任を感じる必要はない、
とは言い切れんのう。仮にもお前はあいつらの上官だった訳じゃしな…」
膝の上で無意識に握っていた手を緩める。
「まさか、バカげた事を考えとらんよな?」
『…そんなことしませんよ。』
私の考えていることがどうやら筒抜けだったらしい。
でも、私もそこまでバカじゃない。あの時負けたと言うのに、かつて白ひげが使っていた能力まで手にした黒ひげに勝つ算段が見えるはずがない。
「…赤犬が元帥となった今、お前はゆっくりしとる暇などないぞ。処分は“まだ”決まっとらんだけじゃ。
いずれ場所が割れて彼奴はを捕まえにくるだろう」