第3章 放浪記
ガシッと両肩を持たれたと思うとギュッときつく抱きつかれた。
痛いくらいに締め付けられるが、それがどれくらい心配かけたか伝わってくる。
しかし、10年という長い時間会っていなかったにも関わらず、こんなに私を思ってくれていたのかと思うと申し訳なさよりも嬉しさがこみ上げてきた。
『あー、ダダンさん、気持ちは本当に伝わりました、ごめんね。でも、そろそろ離して欲しいです…
あら、泣いてるの?』
「泣いてねェよ!!!
クソ、
お前ェ一丁前に敬語なんか使うんじゃねえよ」
『!?』
照れ臭そうに私から視線を外すダダンが可愛く思えて仕方ない。
「昔のように呼べ」ということだと、勝手に解釈して
『ふふっ
ありがとう、ダダン』
そういうと、少しだけ嬉しそうな表情をした。
『マキノさん、また来てもいい?』
「ええ。もちろんよ!」
時間が経ち、そんな会話で酒場を去ってダダンに連れられて昔暮らしていた山賊の家に戻ると、皆私の変貌と突然の訪問に戸惑いながらも「おかえり!」と声をかけてくれた。昔は隣にいた兄弟3人ともここにはいないことに少し寂しさを覚えたが、彼らの見かけによらず優しい性格が10年経っても変わらないことに懐かしさと嬉しさが込み上げた。
ただ……
改めて見ると、みんな老けたなあって思う。老化現象は仕方ないことだが、少し見た目の変化はあった。
「ニー……
お前俺より小さかったのによ…。」
ドグラの悲しそうな顔は無視しておく。
私が帰ってきたことで宴会を開いてくれて、その日は朝までどんちゃん騒ぎをした。
海兵になってからここまで心から笑える日は無かった。
ここに帰ってきて正解だなと思ったのと同時に、少しの不安がよぎる。
いつかここにも迷惑がかかってしまうのではないか。
そう思いながらも、
『(今日だけは甘えていいよね…)』
ダダンたちの優しさに安心して、私は久しぶりにぐっすり眠った。