第3章 放浪記
ルフィがジンベエさんから飛び降りて近づいてくる。罪悪感からできれば顔を合わせたくないが、彼に抱きつきたい衝動に駆られる。矛盾した気持ちが私の中をぐるぐると回った。
でも、インペルダウンの時気づいていなかったからバレない気もする。
…バレたらバレたでもういいか、
プライドなんて今更無いようなものだ。
そう思い、立ち上がってルフィの方に向き直り、帽子を取って彼の顔を見上げた。
「お、おまえ………」
『私のこと、わかる?
わっ!』
「〜〜〜!!!!」
ルフィが勢いよく私に抱きついてきた。
腕は首に、脚は腰に巻きついていて離れそうに無い。その苦しいほどの抱擁は私をひどく安心させた。
さっきまで合わせる顔がない、なんて考えていたのが嘘のように、今は彼と会えた事に喜びを感じている。
耳元で「うを〜〜〜ん!!!」と大きい声を上げているが全く鬱陶しいと感じない。むしろシャツが濡れていく感覚がして申し訳ない気持ちになった。
ルフィに腕を回して背中をさする。10年前、もう泣かせないと決めたのに泣かせてしまった。
『ごめんね、ルフィ。ごめんね』
「〜〜〜!!!!ごめんなァ〜〜!!!!
おれ、おれっ……うゥっ…!!!」
言いたいことが伝わる。助けられなかったことの悔しさを感じているのだろう。と同時に責任も感じているのだろう。さらに腕に力がこもる。
『1人で抱え込ませてごめんね、
でも、あなたが生きていてくれて良かった。
生きててくれて、ありがとう………!!』
思わず私も瞳から涙が溢れる。それを隠すようにルフィの肩に顔をうずめた。
一頻り泣き終わってようやく離れるとルフィはひどい顔をしていて、思わず『ふっ』と笑ってしまった。
「ここに海賊がおりゃせんかったか?」
「トラファルガー・ローならついさっき船を出したぞ。あと2週間は安静を続けろと…
救われたようだな。と、おお、平気か?」
少しふらついた所を冥王が支えてくれた。
2週間ぶりに外に出たからか、日差しに対して免疫が無くなっているようだ。私自身仕組みをあまり理解できていないため限界がわからない。
『平気です』とは言いたいが少し休みたいのが事実。
私の気持ちが伝わったのか、ジンベエさんが地面に座った私の前に立ってくれた。