第3章 放浪記
「いやぁ、参った。」
この海にいれば誰もが一度は耳にしたことのある人物が現れた。
「「「「え〜〜〜〜〜〜!?
冥王レイリー!!??」」」」
殺気を感じられないため瞬時に覇気を解く。それ以前に勝てるわけはないのだが。
そのまま日を遮るようにジャンバールの背中にまた戻った。
冥王ことシルバーズ・レイリーはかの海賊王ゴール・D・ロジャーの船員で、副船長を務めていた男だ。ロジャーの処刑後はシャボンディ諸島で暮らしているため私も何度か彼を見かけたことがあるが、特例で捕まえなくていいと言われていた。それほどにまで強すぎるのだ。
冥王が言うには、船でこの島に向かっていたのだが嵐で転覆してしまい、ここまで泳いで来たらしい。
しかし、ここは凪の帯で嵐なんて起こらない。この島からずっと遠い場所から泳いで来たと推測できる。常人のレベルを遥かに超えすぎていて恐ろしい。
「あァ、そうそう。
ルフィ君がこの島にいると推測したのだが…
それと、君の後ろには誰が隠れているんだ?」
冥王が近づいてくる気配がする。
そして、私の横でピタリと止まった。
「君は…」
冥王の顔を見ると目を丸くして驚いていた。がすぐに口角を上げて目尻にシワを作った。
「良かった。君も無事だったんだな」
というと私の頭にポンポンと手を置く。
初対面のはずなのに、なぜか、ひどく懐かしく感じられる。海で冷え切っているはずなのに大きな掌が温かくて優しい。
ハッとしてその手を払い、距離を取る。まだちゃんとルフィの味方だと確認できてはいない。どれだけ優しい手をしてようが関係ない。
私の警戒を感じ取ったのか冥王は笑いながら「すまんすまん」と言って事の経緯を話し始めた。
「ルフィ君の船のコーティングをしているんだ。
安心しろ。君の味方だよ」
その言葉に嘘はなさそうなので私はやっと警戒を解く。トラファルガーも平気だと分かったみたいで麦わら帽子を冥王に預けた。
そして仲間達に指示を出すと皆ぞろぞろ動き始めた。