第2章 片足の戦士
同じようなゴンドラがもうひとつしつらえてあった。
「逃げ場がひとつだけだと、そこがゾンビだらけならやられてしまうからな」
「確かに!」
「けどその足じゃ、思うように走れないよね?」
チョロ松が言うと、○○がキッとそっちを向いた。文句を言われると思って身構えたチョロ松だったが、
「もし今度私がゾンビに捕まったら、その時は迷わず殺してちょうだい」
その目は本気だった。意外な言葉に黙るしかなかった。
「俺がサポートする」
そう言ったのは遙人だった。
「俺も力を貸すぜ!」
「カラ松!お前この世界に慣れてないだろ?!何ヒーローぶってんだよ?!」
「いいか、お前ら!俺たちはこの二人のおかげで命があるんだぞ?でなけりゃ今頃ゾンビに食われてるぞ。ならば俺たちがするべきは、恩返しだろう?」
「えー、めんどくさーい」
「長男くぉるぁああ!ほんっとクズだな!」
「お前が言うな!」
「でも、確かにカラ松の言う通りだよね…」
「今回だけは僕のあざとさも、役に立たないみたいだしね。やるしかないよ」
ドン!ドン!ドアを叩く音がする。ついにゾンビたちが屋上までやってきたのだ。
「時間がない。急ぐぞ!」
「「おう!」」
全員は乗れないため、4人ずつで乗る。
「俺一番!」
「おそ松兄さん!どれだけクズなんだよ!」
「レディーファーストだろう?!」
今まで黙っていた十四松が口を開いた。
「あのビルに行けばいいんだね?」
「ああ」
「なら、カラ松兄さんが先に行って、みんなを受け止めてよ」
「え?」
どういうことかと問いただす暇もなく十四松はカラ松を持ち上げ、指定されたビルまで投げ飛ばす。
「よいしょー!」
「どわあああああ!」
「「ええええええ?!」」
そのビルに突っ込む形でたどり着いたカラ松。
「無茶苦茶だな、お前ら」
「カラ松さん、大丈夫?!」
○○が言うと慌てて体制を整える。
「ふっ。このくらい、何ともないぜ!」
「次は遙人さんだよ」
「えっ?!俺じゃねぇの?!」
十四松はにっこり笑った。
「おそ松兄さんは、一番最後だよ」
「なんっで俺が最後なんだよ?!」
「僕と一緒に行くんだよ」
「は?!」
怒るおそ松を尻目に遙人を担ぐ十四松。
「カラ松兄さん!ちゃんと受け止めてよ!」