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短編集【果物籠】

第2章 腹黒王子様【由希】



「別にひまりの為じゃなく俺の為だけど?無関係だから邪魔すんなって言いたかっただけだし」


爽やかに笑う由希に、おっそろしい人。と口を歪ませる。


「まぁ、でもひまりが吹っ切れたんなら思わぬ収穫かな?」

「いや、吹っ切れてはいませんけど?1年以上片想いしてたし」


1年以上の片想いとは、そんなにすぐに断ち切れるものじゃない。
それが例え"執着"だったとしても。


由希はひまりの言葉にハァ。とため息を吐いて腕を組む。


「俺は2年以上なんだけど?」

「…なにが?」

「ひまりへの片想い」

「でたでた。由希のナチュラルキザ…ッ」

「ねぇ、ひまり」


ひまりの言葉を遮るように彼女の顎を掴むと、強引に引き寄せる。
鼻と鼻がぶつかりそうな程に近付けられた顔に、ひまりは目を見開いた。
由希の瞳は鋭く細められていて、逸らすことが出来ないその視線に息を呑んだ。


「それ以上言うと、その口塞ぐよ?もうフリーになったひまりに容赦なんてしてやんないからね?」

「す、すみません…でした…」


ひまりの謝罪にパッと手を離すと、また爽やかに笑う由希の切り替えの速さに、こっっっわ!!とブルッと体を震わせた。


「じゃあ戻ろっか。ひまり」

「う、うん…」


抱き締められた事にも、キスをされそうな程に近かった距離も


"嫌だ"と思わなかったな。とひまりが気付いたのはもう少し時間が経ってからだった。

まだまだ初恋を引きずるひまりが、腹黒い王子様のことで頭がいっぱいになるのは



また別のお話し。






— fin —
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