第1章 神と名乗る者
目覚めると、ニーナは何も無い空間に一人佇んでいた。
『ここ、どこ?』
夢を見ているのだろうと思ったが、夢の割には妙に意識がはっきりとしているため夢とも思えない。暫く静寂が続き、恐怖と不安が稲妻のように一気に通り抜けた瞬間、少し低めでドスの効いた声が真後ろから聞こえてきた。
「お前、名をなんと申す。」
『っ...だれ?』
振り返ると、そこには変わった服装をしている得体の知れない人物が仁王立ちして構えていた。
突如現れた不審な人物に、警戒心を壁のように張りめぐらせる。
「あぁ、これはすまなかったな。いきなりで驚かせてしまったか。私は、そうだな...」
不審な人物は、黙り込んだあと耳を疑うようなことを発した。
「私は、今存在する全宇宙の管理者の一人である。簡単に言えば、お前の世界で一般的に呼ばれている”神様”だ。」
『か、神様?何を言うかと思えば、ただの冗談ですか。』
「...まぁ、直に分かる。私は申した。次はお前の名を教えてもらおうか。」
”直に”という単語に少し引っかかったが、すぐに考えるのをやめた。
『ニーナ、だけど』
「ではニーナ、突然で混乱しておるだろうが、ここからかなり入り組んだ話になるため、一つ一つ整理しながら集中して聞いて欲しい。」
まだ不信感は残っているが、ひとまず話を聞くことにした。
「結論から先に言うと、お前には今からONE PIECEの世界の住人となって、その世界を管理してほしい。」
更に耳を疑うような話に、ニーナの頭の中で疑問符が乱舞する。
『何を言ってるの、ONE PIECEって漫画でしょ?』
まるでどこぞの転生系漫画のような展開に、ニーナは再び夢を見ているのかと考える。
「実はな、その世界は実際に存在してしまっているんだ。」
『ONE PIECEの世界が、実際に存在する?ありえない。そんな夢みたいな話...』
「まぁ、確かにそう思うのが自然だな。一つ、昔話をするとしようか。」
『昔話?』
神と名乗る者はこくりと頷くと、一語一語を確かめるようにゆっくり話しだした。