第4章 怪盗ミューズの正体
手錠をはめられた東郷はパトカーに、アカッツカ氏とヴァカボーン氏は別のパトカーに、ミューズ…いや、トキワ家長女はカラ松警部の車に乗り込んだ。
サイレンを鳴らしながら走る車の中でカラ松警部は質問をする。
「ミューズ。君の名前を教えてくれ」
「私は○○。トキワ#NAME1よ」
「○○、俺は君に惚れてしまったようだ。君の無実を信じてるが、もし実刑になったとしても君を待ってる。どうか俺と付き合ってくれ」
「カラ松警部…。私なんか釣り合わないわ…」
「オーノー!そんなことはないぜ、ベイベー!君しかいないんだ!OKと言ってくれ!」
急に口調が変わったカラ松警部にキョトンとする○○。
「…もう少し時間をちょうだい」
「わかった。だがこれだけは覚えておいてくれ。君は俺の心を盗んだんだ。これは由々しき事態だ。回り出したぜ、恋の歯車!」
「はあ……」
「もうひとつ聞かせてくれ。ヴァカボーン氏と君はどういう関係なんだ?」
「私も詳しいことはわからないけど、父が彼の命の恩人らしいの。だから引き取らせて欲しいって言われたの」
「そうなのか。でも驚いたな。全ての伏線がものの見事にピッタリくっついたんだ」
「そうね。私もアカッツカ氏とヴァカボーン氏がいなければ、怪盗なんて成し得なかったわ」
「でもイヤミの時は、鮮やかだったじゃないか。見惚れたぞ」
「うふふ、ありがとう。でもアイデアはアカッツカ氏がくれたのよ」
「あのフライングボードはどうしたんだ?あれすごいよな!」
「ヴァカボーン氏の発明なの。さすがエンジニアよね」
カラ松警部はサイレンを止め、しばらくそのまま走っていたが、レシーバーを手にした。
「こちらカラ松。…その、今からミュー……トキワ○○を口説きに行ってくるから、戻るのが少し遅れる」
『は……え?!ちょ…!はぁ?!何考えてんの?!馬鹿なの?!』
スピーカーから聞こえるトド松警部の声にフッと笑う。
「…ああ、馬鹿になっちまったようだぜ。○○が愛しい気持ちが溢れて止まらないんだ」
『全く……。早めに戻ってきてよ?!』
「了解。サンキュ!」
通信を切り海へ向かい、駐車スペースに車を停める。
「お手をどうぞ」
「ありがとう」
○○の手を取り海沿いの通りへ足を進めた。