第4章 怪盗ミューズの正体
「あれはお前らが撃たないからだろ!」
「無抵抗の人を撃つのは、ただの殺人です」
「綺麗事を抜かすな!あいつらは罪人だぞ!」
「たとえそうであっても、撃たなければならないことをしていません」
「俺の命を奪うと、そう予告してきただろうが!」
「命と書いてありましたか?生涯とあったはずです。現にあなたは今、逮捕された。社会的信用をなくしたんです。とにかく争うなら裁判を起こして、そこでご自分の潔白を証明して下さい。もっともこれだけの証人がいるんですから無理でしょうけどね」
東郷はガックリとうなだれ、逮捕された。
「さて、そろそろ本当のことを聞かせてくれないか、ミューズ」
「そうね、東郷が捕まるまではと思っていたから」
するとアカッツカ氏もヴァカボーン氏もミューズを止めようとした。
「お嬢様!」
「いいのよ、二人ともありがとう」
「お嬢様?」
アカッツカ氏が前に出る。
「この方は今は亡きトキワ家のお嬢様だったお方です」
「トキワ家の?!」
トキワ家と言えば二十年ほど前に主が亡くなり滅亡した、当時はこの辺りを牛耳るほどの資産家だった。強盗が入ってトキワ家の人間を殺し金品や土地の権利書まで奪って逃走したのだ。その犯人こそ東郷である。
「この屋敷は元々トキワ様のお屋敷なんです」
東郷が慌てる。
「嘘をつくな!トキワの奴らは全員殺したはずだ!金を寄越せと言ったのに、ヤクザに渡す金はないと抜かしおったから殺したんだ!」
「私はクローゼットの中に隠れていたのよ。厳密には隠れるように言われてそこにいたの。あの時私は4才だったわ。だからただ見てるしかできなかったのよ」
「くっ!ガキがいたとは…!」
「私をそこに隠れるように言ったのが執事だったアカッツカ氏で、私と一緒にいてくれた人。そして何もかもを失った私を引き取って我が子のように育ててくれたのがヴァカボーン氏なの」
「お嬢様は自分の危険を省みず、私たちの宝を取り返しす計画を立てて下さったんです。私たちはお嬢様に少しでも役に立ちたいと思い、必死に働いて富豪になったんです」
「それをまた東郷の傘下であるイヤミやブラックに取り上げられて…!」
「アカッツカ氏の時は用意が間に合わず、お嬢様に全てを任せてしまって…。ですから今度は私がお手伝い差し上げたんです」
「と、とにかく署で聞こう」