第4章 怪盗ミューズの正体
東郷は強盗事件で捕まって以来用心深くなっていて、そう簡単には尻尾を出さなくなっている。その東郷からどうやって悪事の証拠を掴むというのか。しかも東郷は車の中でその周りを警官がぐるりと囲んでいる。入り込む隙はない。
「トイレに出てくるくらいしか外に出ることは………トイレだ!」
「カラ松警部、トイレ行きたいんですか?」
「違う、東郷のことだ。トイレに行きたくなったら、どうする?」
「え?……あっ!」
食料と飲料は車に持って入ったが、簡易トイレ持っていないはずだ。そうなるとトイレに行くのに必ず車を降りなければならない。
そんなカラ松警部の心配をよそに東郷は、車の中で豪快に飲み食いしていた。だがある時を境に顔色が変わる。恐らくトイレに行きたいのだろう。車から出るか葛藤しているようだ。そしてついに窓を開けた。
「おい!誰かトイレまでついてこい!警護させてやる!」
「………わかりました」
内心イラッとしながらも二人の警官をついていかせる。帰ってきたらすぐ乗れるように、車のドアは開きっぱなしにしてある。時刻は夜の11時をまわった。嫌が上にも緊張が走る。
しばらくして車に戻った東郷は悲鳴をあげた。
「うわあああ!」
「どうしました?!」
「く、車の中にムカデが…!」
そう言って慌てて屋敷に戻り、殺虫剤を車内に吹き付ける。ムカデは苦しそうにもがきながら出て行った。
「はあ、はあ。様子はどうだ?怪盗ミューズは来たのか?!」
「いえ、まだ誰も」
「はっはっはっは!そうだろうとも、そうだろうとも!これだけの警護だ、これるはずがないんだ!」
「ふふふ。それはどうかしらね」
「なっ!どこだ!隠れてないで出てこい!警察どもも動け!」
「警察の方に動いていただく必要はないわ」
そう言って出てきたのは、ミューズだけではなかった。アカッツカ氏とヴァカボーン氏も一緒だ。
「な、なんだお前らは?!撃て、撃てー!」
「東郷さん、無茶言わないで下さい!」
「ええい、あてにならん警察め!俺が撃つ!」
東郷はそばにいた警官から拳銃を奪い、ミューズたちに銃口を向けた。
「馬鹿野郎!」
思わず東郷を殴り倒すカラ松警部。
「東郷さん。あなたを公務執行妨害及び殺人未遂で逮捕する」
「なんだと?!俺は被害者だぞ?!」
「警官の拳銃を奪っただけでも罪になるんです」