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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第19章  その後のはなし



(入浴を手伝ってやりたい…?あ、そ、そうか、腕も足も一本ずつしかない私が、入浴で困るだろうと思ってくださって…)

杏寿郎の顔を見ると、少しだけ眉を下げた表情でニコッと笑いかけられた。

それを見たら咲は、何やらよこしまな事を考えて照れていた自分のことが恥ずかしくなってきて、それと同時にまるで心臓が湯に浸けられたかのように、心がじんわりとあたたかくなってくるのを感じたのだった。

「……杏寿郎さんは、本当にお優しい方ですね」

たまらなくなって咲がギュッと抱きつくと、杏寿郎も両腕を回して抱きしめ返してくれた。

「良いだろうか…?」

「はい、是非ともお願いします…!」

湯に浸かる前から体がポカポカとして熱いくらいだと、咲は杏寿郎の逞しい腕の中で思うのだった。


「俺が抱えてやるから、義足はもう外してしまいなさい」

杏寿郎からそう言われたため、義足は今は脱衣籠の中だ。

そういう訳で、咲は杏寿郎に抱きかかえられる格好で浴場に向かっている。

一応布を体に巻いてはいるものの、抱えてくれている杏寿郎の上半身はむき出しであり、自身の右の二の腕が、杏寿郎の厚い胸板にぴったりと付いているかと思うと、咲はどうしても恥ずかしさでいたたまれなくなって俯いてしまうのだった。

だが、先ほどのやりとりで吹っ切れた様子の杏寿郎は、すっかり普段の彼に戻っていて、ハツラツとした声で「しかし素晴らしい温泉だな!む、咲、見てみろ!木々があんなに青い!」などと言って、ニコニコと笑っていた。

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