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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に



だが悲鳴嶼よりも、大量の涙を流している男がいた。

「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁっ!!咲ッ、よ、良かったな゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!」

涙と鼻水と、多分ヨダレだと思われる液体で顔をグジュグジュにした不死川が、紋服を着た黒い背中をまるでおはぎのように丸くして自分の席で泣いていた。

ちょっと引くくらい泣いているので、皆、引いている。

ただ一人だけ、おずおずと声をかけようとしている者がいた。

「あ、兄貴…」

手に持った手ぬぐいをぎゅっと握り締めて、それでも膝を進めることが出来ずにいる。

そんな背中を、ポンを押した者があった。

「玄弥、行ってきなよ。それでお兄さんの涙を拭いてあげな」

「炭治郎!」

いつの間にか横に炭治郎が膝をついており、その笑顔に励まされて、玄弥は意を決して実弥のもとへと近づいて行った。

「あ、兄貴…良かったらこれ、使ってくれよ…」

ビクビクとしながら差し出すと、実弥は顔を上げて、真っ赤に腫れた目でじっと手ぬぐいと玄弥の顔を見つめてきた。

それからゆっくりと手を伸ばし、するりと手ぬぐいを取った。

「……ありがとな、玄弥ァ」

「兄貴…!!」

めでたい席に、嬉しい事。

不死川兄弟の目からも、涙が止まらないのだった。

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