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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第18章  共に



咲は暗い森の中を駆け回る。

あちらこちらから悲鳴とも気合いともつかない大声が上がり、何が何だか分からない。

不死川と甚振がどこで戦っているのかも分からない。

そう思った時、生い茂った木々の間を、月明かりを背にして人型のシルエットが飛んだ。

「っ、不死川さん!?」

咲が思わず見上げた瞬間、グラリと体が傾いた。

ドサッ、と全身に伝わる衝撃と、口の中に広がる土の味で、自分が倒れたのだということに気がついた。

急いで立ち上がろうと両手をついたが、体は何故か斜めに持ち上がって、横ざまに咲は倒れ込む。

(なんだ?)

と思って土に付いた側を見下ろした時、咲は言葉を失った。

あるはずの左腕が、まるごと無くなっていた。

ズッパリと隊服もろとも切断された二の腕からはピュッ、ピュッと規則的なリズムで水鉄砲のように血が噴き出していて、暗い森の中にいるのにそれは驚く程鮮明に見えた。

「え……っ」

その瞬間は、不思議なことに痛みは全くなかった。

だが、ほんの僅かな間を置いて、激しい痛みが走り始めたのだった。

「ぁぐっ、うううう゛っ!!!」

気を失ってしまいそうな痛み。

土の上に丸まった咲は、視線のすぐ先に、ダラリと垂れた自身の腕を咥えた甚振の姿を見た。

「ハァッ、ハァッ!!あ、あの野郎…思ったよりも強い…!!このままじゃ負けちまう…!!」

喘ぐように息を切らしながら独り言のように甚振はつぶやくと、もはや獣としか形容しようのない様子で、咥えた咲の左腕を貪り喰い始めた。

「どこ行きやがったァ!!」

遠くから不死川の声が聞こえて、ビクリと体を揺らした甚振は、食いかけの腕を咥えたまま闇の中へと消えた。

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