第4章 ー荒北靖友の場合ー
「今日はお疲れさん。乾杯!」
「かんぱーい!ありがとう!」
カチン、と複数のグラスが触れ合う良い音に頬を綻ばせてそれを口に運ぶと美味しさに目を輝かせていたが、晴れの日だとは思えないほど不機嫌な表情の靖くんにそのグラスを奪い取られて。
「乾杯じゃねェヨ!なんっっでてめぇらがオレの家に居ンだよ!寛いでんじゃねェ!」
「そんな大声出すなよ靖友。せっかくの結婚式の夜だろ?」
「誰のせいだと思ってんだ!新開てめぇボケナス!」
「はい、玲香。オレの飲む?」
「悠人!おめぇも何溶け込んじゃってんノォ!?」
「靖くん!隼人くんも悠人も片付け手伝ってくれたんだよ?」
「だからと言って寛ぎ過ぎだっつってんだよ!」
悠人から新たなグラスを受け取ると注がれているシャンパンを一口飲むと、未だに一人ギャンギャン騒いでいる靖くんを尻目に隣の悠人と美味しいねと話していれば、無視すんナ!ってまたグラスを取り上げられて。
隼人くんも悠人も靖くんと付き合いが長いからか元々の性格からか、聞き流しているような態度に遂に靖くんは頭を抱えてしゃがみ込んで。
諦めたように大きな溜め息をついた靖くんのそばに行き、慰めるように背中を撫でてあげると少し落ち着いてきたらしく小さな唸り声が聞こえた。
「良いだろ?今日からオレと靖友は従兄弟なんだしさ」
「はあ…とんだサプライズだっつーの」
「ごめんね靖くん今まで黙ってて。隼人くんから黙ってた方が面白いって言われてて…でも靖くん嬉しそうだね!」
「別にィ!玲香を嫁には貰ったけど新開と従兄弟になったつもりはねェからな」
ニコニコしてる隼人くんとは対象的な靖くんだけど私にはわかる。本当は嬉しいんだけど素直になれないだけだって…だって纏ってる雰囲気が柔らかいもの。
「まあまあ、また靖友と接点持てて嬉しいよ。玲香のこと頼んだぜ。オレの妹みたいなモンだからさ」
「ケッ!おめぇに言われなくてもわかってるっつーの」
「隼人くん…ありがと!私、靖くんと幸せになるね!」
隼人くんの言葉が嬉しくて、涙目になりながらギュッと抱き着くと優しく抱き締めてくれて。
隼人くんは小さい頃から私のこと可愛がってくれて、本当のお兄ちゃんみたいで凄く安心する。
ーーなんて思っていたら思い切り後ろへ引っ張られて、大好きな匂いに包まれた。