第3章 ー巻島裕介の場合ー
裕介の小さくも真っ直ぐな瞳に見つめられれば目をそらすことなど出来なくて。
ーーゆ、う…
「ゆ、う…す、け、の…もの…」
裕介の綺麗な唇が動く形を無意識に音にすれば、満足そうにその口元を吊り上げた彼の顔が近づいて来て吸い込まれるように唇が重なる。
何度か啄むような口付けの後、端正な唇が離れていくのが少し寂しくなって見つめていれば裕介の長い指が私の髪を一掬いして優しく梳かれると恥ずかしくなって慌てて顔を背ける。
私のそんな様子を見て、クハッ!と笑った裕介は隣に寝転がり後ろからギュッと包み込むように抱き締めて。
裕介の匂いに包まれるとドキドキして心臓が音を立てて騒ぎ出す。それと同時に大きな安心感に包まれて、たまらなく愛しく思うとクルッと振り返り裕介にギュッと抱き着いた。
「これからはずっと一緒に居られるッショ」
「うん…これからさ、仕事でたくさん綺麗なモデルさんとか女優さんに会うと思うけどさ…」
「モデル…?女優…?藪から棒に何ショ」
「裕介…モテるだろうからさ、たくさん言い寄られたり…するでしょ?」
「別にモテるわけじゃねェけど…何が言いたいんだよ?」
なかなか本音が言えなくてもごもごしてると、ニヤニヤしてる裕介に見つめられて続きを促されると裕介の胸に顔を埋めて。
「目移りしちゃ、ダメだからね…!」
「目移り…?するわけねェだろ?高校の時からお前しか見てねェよ」
裕介の指が顎にかかると埋めていた顔は上を向かされ、視線が絡み合うとそのまま唇を奪われて。
「今まで言ってなかったけど…一目惚れしたの、玲香だけじゃねェショ」
「……え?」
「一回しか言わねェからちゃんと聞けッショ!いつも東堂の応援に来てた玲香のことずっと見てたんだヨ…オレも、お前のこと一目惚れしてたっつーことだよ!」
恥ずかしいのか頬をポリポリと掻きながらも早口にまくし立てるようにそう言った裕介の言葉が信じられなくて。
どうやら、一目惚れしていたのは私だけではなかったらしいという事実を理解するとどうしようもなく嬉しくて、その感情が抑えきれなくなると思い切り裕介に抱きついて。
「…だから、オレは今までお前しか見てねェしこれからも変わんねェショォ」
優しく抱き締めてくれる裕介の言葉に私は何度も頷いたーー。
ー完結ー