第3章 ー巻島裕介の場合ー
「…裕介のくせに、無駄にときめくこと言うな」
「クハ!オレも大人の男になったってやつッショ」
「なんか私ひとり置いてかれてるみたい」
「はぁ?何言ってんショ。連れてってやるよ一緒にな」
それが夫婦ってモンだろ?なんてニヤリと笑った裕介の余裕そうな表情に、大人の色気を感じて思わず頬が赤くなる。
裕介の顔が近くなると自然と目を瞑る。それを合図に再び唇が重なって。すぐに深く濃厚になったキスにたちまち翻弄される。
「んっ、はぁ、ハァッ!ふ…んんっ」
「どんな女よりも、最高に綺麗ッショ…」
「んァ…ふ、ゆう…っすけ…!」
舌が絡まるたびに厭らしい音が響き、それだけで体が小さく震える。呼吸も乱れると口から漏れるのは甘い喘ぎ声だけで。
「せっかくのドレス、皺になっちまうからな」
唇を離した裕介は手慣れた手付きでドレスを脱がし始めて。デザインした本人だもんね、どこにファスナーがついてるのとか当たり前に知ってるよね。
あっという間に下着姿にされてしまえば恥ずかしさに身をよじる。
「ん?この下着って…」
「うん、去年のクリスマスに裕介が贈ってくれたの。凄い可愛いし、イギリスのでしょ?なんか勿体なくて中々身に着けられなかったんだけど…今日は特別だから」
「はぁ…玲香、それわかっててやってるワケじゃネェよな?」
大きくため息をついた裕介の意図がわからず、何か気に触るようなことでも言ってしまったかと謝ろうとしたが、ギュッと強く抱き締められてその言葉も引っ込む。
「マジで可愛過ぎッショ…それ、誘ってるとしか思えネェから」
「え?誘ってな…え?ひゃ、あっ!」
耳元で囁かれたその声はいつものトーンより低いもので、腰に響くような甘い痺れが生まれて。
指を絡め取られベッドに縫い付けられれば首筋に顔を埋めた裕介にビクッとして。チクリとした痛みにキスマークが付けられたとわかる。
裕介からキスマークなんて、初めてだ。今まで何があっても綺麗な肌に痕を付けたくないって言ってたのに。
「やっとオレだけのモンになったショ。オマエ手に入れる為にどんだけ必死になったか」
帰国するのだってこれでもかなり前倒ししたッショ。と言う裕介と視線が絡み合うと、その瞳の奥の熱に誘われるように体の奥が熱くなるのを感じた。