第3章 響く音はひろがりとどく
彼女の背を支えて、虚から距離をとる。
攻撃を躱されたことで、虚は頭からコンクリートにのめりこんでいた。
「千春ちゃっ………泣かせちゃうっかな…」
虚の攻撃が届く前に、助けた彼女が呟いた言葉。
「まったく。
やられそうな時に他人の心配とはね。」
片腕で支えている彼女は、口から血の跡があり、傷だらけで意識を失っているようにみえた。
一度目を閉じて、また開く。
よぎった感情は、消した。
いまは戦いを終わらせないといけない。
そしておそらく、それをするのは僕じゃない。
「しっかりするんだ。
君が戦うべき相手が、まだいるだろう。」
僕の言葉に、ふるりと目蓋が震えて、彼女は瞳を開けた。