第3章 響く音はひろがりとどく
対峙した虚は縛道で捕らえていることに加え、
身動き一つ出来ないほどに疲弊していて、何より出血が止まらないようだった。
「随分ト……時ヲ要してイるな…。
それガ………ハァ………命とりダよ、死神」
「なんだと…?」
何かあるのかと、油断なくも問おうと口を開いた時ーー。
ドチャッと破裂音と共に、斬り落としたはずの尾までの体が生えていた。
それと同時に縛道も解かれ、自由の身となる虚。
「俺ノ躰は特殊でネ。主たるハ蛇だガ、
蜥蜴ノ如くに生えテくるノさ。時がかかるノガ難点だがネ。」
ニタリと笑った虚はわざとらしく煽る様に告げてきた。
「感謝するヨ……若造。
そノ女ヲ留メてくれテ」
ギリっと睨みつける俺は、堪らず舌打ちをするしか出来ない。
「待って…………再生するって事は……!!」
石津が、バッと後ろの方角を向いた瞬間だった。
チリィン リィン
鈴の音が、耳に届いたのは。
「この音は………千春が持ってた…」
「黒崎さん、此方は任せていいですか‼︎」
石津の切羽詰まった言葉に、俺はただ頷くだけだった。
「お守りって千春が言ってたっ。
早くいけ石津‼︎
コイツはすぐに片付けて俺も後を追う!」
「ありがとうございます‼︎」
瞬間重なった石津の瞳に、信頼の意を込めて。
土煙を上げる程の勢いで、石津は空き地を去った。