第3章 響く音はひろがりとどく
ひととおり町内の見廻りを終えて、ひと息つく。
いまは黒崎さん達と初めて会った公園にいるが、気にかかる事があった。
風にのって微かに虚の匂いがするのだ。
酷く朧げで微量だが間違いない。
ただ、それがどこからなのかが把握できずにいた。
身体の感覚が鈍ってもいるのかと考えれば、今朝のくしゃみと少しの悪寒を思い出す。
仮眠をとっても、落ち着くどころか寒気が増すばかりだ。
今日のことが済んだら、浦原さんにでも相談しよう。
いまは千春ちゃんとの約束を果たすのが先だし、虚の動向も気になる。
気を引き締めないといけない。
伝令神機をみると、千春ちゃんと別れてからそこそこ時間が経っていた。
「行ってみるか…」
私は瞬歩で千春ちゃんの元へと向かう事にした。