第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「悩んでいいんだ。ゆっくり考えよ。」
うまく説明出来ずに言葉が詰まってしまった私に、先生はそんな言葉を投げかけてくれた。
「形に残るものか、食べ物みたいに失せ物にするか。どちらにしようか考えていたりするのかな?」
「………えっと、まだ……です」
思わずこぼした言葉に、先生は頷いてまた答えをくれた。
提案をするように、話してくれた。
「そうだよね。でも、渡す物を選ぶ時にどちらにも一ついい共通点があるんだ。それを話そうか。
きっと、いいきっかけになるかもだから。」
「共通点ってなんですか?」
「思い出を共有するってこと。」
先生の言葉に私は視線を上げる。
疑問が心にあって、何をどうしたらいいかわからない私に、先生の言葉はスッと入っていって。
自分でもハッとしたんだと思う。
ふっと笑って、先生はゆっくりと話してくれた。