第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
年が明けて、冬の気配が濃くなる寒九の夜。
「…………虚のにおいがする」
冬の夜風が運んだ気配に、私は不穏な気持ちを無理にでも区切りをつける。
無音の伝令神機を掴み、休んでいた部屋を後にした。
浦原さんに出立の許可をもらい、いつもの様にルキアさんも同行して処理をすることになった。
「最近、目に見えて虚の出現率が多いとは思いませんか?」
「10日で35の司令はな。まあ言ったところで状況はかわらん。
他所に被害がでる前に急ぐぞ」
「はい!」
遅れて伝わる司令の通知にため息を吐きつつ、私達は虚の出現場所まで走り抜けた。