第9章 約束したから
「あの墓誌をみてから、アンタ喪心してるんだ。
…………自分がいったい何者なのか、わからなくなっちまってるのさ」
風司の言葉に、私は何も言えなくて。
それから逃げるみたいに、瞳を閉じる。
そうだ、あの時ーー。
大きく鳴った心臓の音も、感じた苦しさも、忘れられるはずなんてなかった。
あれからずっと、名を呼ばれる度に笑顔の下では、内心ビクついてしまっている自分がいて。
動揺を顔に出したくなくて、必死に剥がれないようにと笑顔を張り付けている。
自分の事がわからなくなった。
動けなくなってしまっていた。
記された名も音の響も、同じ。
亡くなってしまった
石田さんの大切なご友人の話。
死した石田さんのご友人が、今の自分なのではないかと言う"仮説"。
確証なんてない。
真実かどうかすら、わからない。
でもーー本当だとも言えてしまう。
だとしたなら。
私は どうしたらいい………っ!!
「怯えるんじゃねえ………実穂」
「っ………かぜ、つかさ」
凛とした、私を呼ぶ声。
それに誘われて目を開くと、気づかない内に、自分か震えていたんだと知る。