第9章 約束したから
12月27日 黒崎家 自室
「あん?………なんだこのメッセージ」
夕食も、遊子のルール"食後三十分以内の歯磨き"も終わらせて部屋に戻った時。
ベッドに放られた携帯に手を伸ばしたのだが、思いがけないメッセージがこれまた思いもしない人物から届いていた。
うーんと、唸りながら記憶を辿れば……思い出した。
面倒だが、仕方ない。
約束は………確かにしたのを覚えているから。
時計を見れば19時過ぎで、この時間なら外出しても問題ないだろうと自己完結する。
財布や携帯をコートのポケットに押し込み、羽織って一階へ下りた。
「お兄ちゃんお出かけ?」
「おー。すぐそこだから心配ない。
柚子も夏梨も寝てろよ」
「そっか、一兄いってらっしゃい」
「夏梨ちゃん⁈」
くるりと振り返って大丈夫だからと告げた俺の言葉に、心配顔の柚子はようやく納得してくれた。
「じゃあ、いってくる。親父にも出かけたって言っといてくれ」
家を出て歩きながら不意に夜空を見れば、遠くに三日月。
吐く息は、もちろん白い。
静かな夜だったが、12月の夜風が身に染みた。
とりあえず、話より先に寒いって愚痴ろう。
それくらいは許されるはずだ。