第8章 鈴音の再会
だいたいーー誰かを好きになるなんて、考えられない。
自分には、そんな感情なんて身に余るものだ。
そう思うのに、否定している自分の心にそれでも浮かぶのはーー石田さんの笑顔やかけてくれた言葉で。
現世の言葉を覚える為にと通った古本屋で、いつか読んだ本を思い出す。
日々過ごす中で出会った男女が、恋をするーーそんな話。
もどかしい気持ちや、相手を思う気持ちをただ読んでいただけの私。
こんな事が、実際には現世の人々の中にもあるんだろうと、素敵だなと思っていた。
だけど、いざそれが自分にふりかかるなんて、考えもしなかった。
「こんなの………おかしいよっ」
戸惑い ただ苦しく思う心
だって………本で読んだ女の子や、微笑みながら話してくれた織姫さんみたいな人が持てる気持ちのはずなんだ。
人が、人を好きになるーーなんて。
死神の私には、不必要なモノだ。