第7章 その日 口火を切る
「最後にね、『友達助けるのに理由考えることないだろ?』だって。
………そんな風に言われて、どこか救われた気がしたの。
失くしたと思ってた絆だったけど、ちゃんとあったんだよ。
だからね、石津さんも大丈夫だよ。」
「井上の言うとおりだな。
結んだ絆は、容易く切れるものではない。
悩むことも悪い事ではないのだ。悩むと言う事は、それだけ大事に思う証なのだから。」
優しい瞳で見つめてくるお二人に、たまらず私は涙を流した。
「…………はい、ありがとうございますっ」
うれし泣きだからと話せば、安堵のため息が2つ。
やっぱり、話してよかった。
失くしたくないと思う気持ちを持つことは、いけない事じゃなかった。
それがわかっただけでも、心が軽くなった。
そう思ってお二人に私は、再度御礼を伝えた。
長い1日が、終わろうとしている。
思慕の情。感謝の意。
絆の在り処。
それぞれの心に、いろんな想いが生まれ知れた日となった。