第7章 その日 口火を切る
「そう………ですか。
ありがとうございます。
傘も、ずっと返せなくてすいませんでした」
手渡した傘を見る浦原さんは、僕に視線を向けながらふっと笑って呟いた。
「ちゃんと言えたみたいで、よかったですね」
「…………………え?」
響いた声が、いつもの飄々とした感じではなくて………なんて言うか、優しかった。
だから、つい驚いて固まってしまう。
「なんだか、憑き物がとれたみたいな顔だ。
いつぞやの雨の日の険しい顔と比べたら、別人みたいっすよ?今の石田さん」
「そんな風に………僕は見えますか?」
「少なくともアタシには、そうっスね」
「だとしたら、みんなや石津さんと過ごしたからだと思います」
気恥ずかしさがまた胸に広がったけど、言葉にしたことは事実だ。
みんなと過ごして、彼女を知って、さらには自分とも向き合う事が出来たのだ。
少し前の自分と良い意味で違うと言われれば、確かにそうなのだろう。
「………そうですか。
いやぁ、いいもんですね若いって!」
「ええ?!」
真剣な僕の返答とは裏腹に、扇子をひらひらしながら言われたおかげで、はぐらかされた様な…肩透かしな気分だ。