第6章 手をのばすは夢の中
まただ
この夢を視るのは 何度目か
幼い頃の僕は降り続く雨の中で
ただ、見つめる事しか出来なかった。
傷つき血だらけで倒れる、幼い彼女を。
信じたくなくて 受け止められなくて
何もできなかった僕自身が嫌で
滴る雨粒に溢れた涙がまざる。
手を伸ばす 彼女まであと少し
指先が触れる、その瞬間--
僕は目が覚めた。
夢の中で伸ばした腕は、いつもと変わらない天井を彷徨って、結局視界を覆う。
目覚めは言うまでもなく、良くない。
忘れるはずはないのに。
度々視る、過去の夢。
もう一度眠る気なんて起きなくて、少し早めの支度をしようとベッドを出た。