第5章 サイドストーリー *ふたつめの贈り物*
部屋に戻ってきて、今日の事を改めて話すことになった。
「本当にお疲れ様、モネ。怪我はどう?」
「もうすっかり良くなりました。………井上さんから聞いたんですが、貴方も鬼道で私を治すのに手伝ってくださったと聞きました。
本当に………ありがとうございますっ」
すっと一礼した私に、とんでもないといった表情をする実穂様。
それから優しい眼差しをむけて、話してくれた。
「私ね、モネに出来そうな事考えてたんだけどさ。音を拾うの得意だよね?さっきの浦原さんを見て思ったんだ。
だから、索敵とか周囲確認とか出来ないかな?」
「実は私も同じこと考えてました!まさか先に言われるとは思いませんでした。でも、これで私の役目が出来ます。
改めて、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく。
………あと、はいこれ」
徐に差し出されたのは、ぬいぐるみ。
掌サイズの白い毛並みでかわいい子羊姿だった。
ふわふわで気持ちがいいなと感じていたけど。
「あの、これは………」
「今回の感謝と謝罪を含めた贈り物………です」
「前にコンさん達みたいにぬいぐるみ欲しいって言ってたから、その………あげたくてっわぁ!!」
「………ありがとうございます‼︎」
嬉しさと驚きがないまぜな心でも、思いっきり胸に飛びこむ事は出来た。
嬉しくて嬉しくて、羊の体みたいにふわふわとしている。
「喜んでくれてよかったよ。井上さんと石田さんに教わって作ったの」
「尚嬉しいです!」
「モネは猫っぽいところがあるけど、羊が好きって言ってたから。どうしてもそれにしたかったの」
「大事にします!」
「………ありがとう」
まさかこんな素敵な贈り物があるなんて。
次の日から私は、実穂様がくれた子羊のぬいぐるみにコンさんと同じように入って学校に行く事になる。
明日は私もお礼を送ろう
紫のアネモネの花を 送ろう
そう決めて、ぬいぐるみに入った私。
大事なものがまたひとつ、増えた。
一つ目は モネの名前
そして
二つ目は 手作りの羊のぬいぐるみ
ずっとずっと 大事にする
この人との絆と共に