第4章 過ぎゆく秋空の日々
「何かあった?石津さん」
石田さんの一言に私はなんて答えたらいいかわからなかった。
どうしてそんな事を聞くのかと頭がいっぱいになる。
「何か………とは?」
「ごめん、変に捉えて欲しくないんだ。
僕の勘違いかもしれないけど、なんだか元気なさそうに見えたから」
「…………そんな顔してましたか?」
「少しだけ………」
そっと此方の様子を見るような視線と言葉に、思わず口籠ってしまう。
ほんの僅かの時間しか、考えていなかったのに。
表情だって、普通だったはず。
どうして………石田さんは"何かあると"わかってしまったんだろう。
私が答えに困っていると、申し訳なさそうな顔をして石田さんは口を開いた。
「言いにくい事なら、無理には聞かない。
ただ……言って楽になるなら、僕じゃなくても誰かに聞いてもらうといいよ」
「それは………」
「君からの受売り」
その言葉に思わず顔をあげると、戯けた様にふっと優しく笑う石田さんを見た。
そんな顔をされるなんて、思わなくて。
少し驚いてしまって、小さく返事をするのがやっとだった。