第6章 誰のせい? ジェイド・リーチ
心臓が裂けそうなくらいに鼓動を打ち始め、私はたまらず会議室1を飛び出して、どこかへと走っていく。
頭の中はぐちゃぐちゃで何がどうとか全く分からない。
ただ、1つ確かなことは彼が女とキスをしていたということだけだった。
「わぷっ!あっ、ごめんなさい!」
無我夢中で走っていたら、誰かの胸に顔面をぶつけてしまった。
顔を上げると、そこには目を丸くして驚いているジェイド先輩がいた。
「そんなに慌ててどうされたんです?なにか虫でも見ましたか?」
「いえ、あ、違うんですけど…やだ…」
ジェイド先輩を見た安堵からなのか目からポロポロと大粒の涙が落ちていく。
止まって欲しくても止まらないまま、私は立ちすくんで涙を流してしまう。
「…会議までは時間がありますし、こちらで一息付きましょうか」
ジェイド先輩に肩を抱かれて、私は給湯室に身を隠した。
給湯室の小さな窓に強く雨が打ち付けているように、信じたくない現実が心を打ち付ける。
「ふむ…なるほど、つまりは彼氏さんが浮気をしていたと…」
「はい…すみません、こんな話…」
「いえいえ、良いんですよ」
ジェイド先輩の大きな手のひらが背中を撫でてくれているお陰でだんだん深呼吸が出来るようになってきた。