第3章 リンドウを貴女に ジェイド・リーチ
「じゃあどうして…」
ジェイド先輩なら分かってくれると信じていた。
優しく声をかけてくれるし、勉強も教えてくれて、ご飯も作ってくれて、大好きな先輩だった。
異世界のナイトレイブンカレッジでの心の拠り所だったのに、音を立ててそれは崩れて行った。
「…あなたは、帰ったらまたいつも通りの生活が出来ると思っていたんですか?」
「はい、思っていました…だから帰りたかったんです」
声が震えてきた。
「ここは魔法界です。間違いとはいえ、ただの人間に魔法を教えてそのまま帰すなんてことしませんよ」
突き放すような冷たい声。
私は顔をあげると、ジェイド先輩は変わらないでにっこりと微笑んでいる。
「向こうの世界でのあなたの記憶を消しているかもしれません」