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 醒めない夢を 【短編集】【R18あり】

第3章 リンドウを貴女に ジェイド・リーチ


僕はある鏡を目の前にしていた。
監督生さんが帰れる鏡を見つけていたことを僕は知っている。
放課後に学園長の元へ行き、特別に鏡の間を出入りして、鏡を探して、昨日の夜にようやく見つけたことを。
そして今日の昼の例え話で今晩にでも帰るのだろうと推測した。

ー鉄は熱いうちに叩けと言いますし

金色の縁に様々な花が掘られている鏡を取り出して、乱雑に床に投げ捨てる。
これくらいで鏡の間にある鏡は割れない。
上から覗いて見ると、真っ暗な闇の中で僕のオッドアイが不気味に光っていた。
鏡に靴裏を向けて、足をあげて、勢いよく下に振り下ろす。

バキッ

靴の踵が鏡にめり込み、穴が空いた。
足を上にあげると、キラキラと僅かな光に輝く破片が落ちていく。
鏡の表面にはぽっかりと空いた穴とその周りに蜘蛛の巣のようにヒビが広がっていた。

「あんな例え話をしなければ良かったのに…」

ぽそりと呟く。
不思議と罪悪感はなかった。
これで良かったのだとさえ思えてくる。
後ろに視線を感じて僕は振り返ると、暗闇にぼんやりと小さな影が浮かんだ。

「おや、女性がこんな夜更けにどうされたんです?」

胸に溢れてたまらない幸福感で自然に口角がつりあがり、笑顔が浮かんだ。
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