第32章 約束
「──── アルコは“自由”だ」
雪を含んだ強い風が、アルコのフードを取り去った。彼女の首もとにしまわれていた黒髪が舞う。
血や肉の通(かよ)っていない髪の毛は、一瞬で冷える。それは凍えた刃となって、アルコの頬(ほお)を打った。
ローが提案したのは、自由への呪縛。
『フレバンスに行けば、自由になれる』という、条件付きの呪縛。
おれが死んで、そのことに ──── 『おれが死んだという事実』に囚われてしまったとしても、フレバンスに行けば自由になれる
もし
おれが死んで
傷ついたとしたも
落ち込んだとしても
立ち止まったとしても
それは一時的なものになる
おれの死……なんて そんなくだらねェことで
アルコが自由に羽ばたけなくなるなんて
死んでも死にきれない
「葬儀みてェなもんだ」
それは残された者のための儀式
死んだ者のためじゃない
アルコが自由に生きるために