第8章 衝動 【マリンフォード 頂上戦争】
アルコの初めての治療が行われた。
ローの能力によって、左足首付近の珀鉛が取り除かれたのは一瞬の出来事だった。
その後丁寧に処置をしていくローをアルコは上半身を起こしたまま見ていた。
集中力が必要な治療が終わったのか、ローからアルコに話しかける。
ローか質問してきたのは、おもに“鷹の目”について。とくに七武海への加入経緯、立場、海軍からはどんな依頼や召集があるのかを問いつめた。アルコがミホークの『仕事』について知っていることはあまりない。時折、海軍中将クラスの人物が何かを通達に来ることがあり、その時の世界状況やミホークの様子などを話題にした。
その流れから、今発令されている七武海の強制召集と海軍本部で行われる白ひげ海賊団隊長・火拳のエースの処刑について話が及んだ。
ローは迷っていた。
──── 七武海、白ひげ、海軍、大将……。マリンフォードで確実に起こるであろう巨大勢力の衝突。
しかし、ただ 行って何になる。
戦争に参加する訳でも、誰かを手助けする訳でもない。
しかし、ただ じっとしていていいのか。
新聞からの情報だけでは満足できそうにない。
自分でも説明できない衝動。
堂々巡りの思考。
もしクルーを危険にさらしたら ────
「時代が動くわ」
「!」
アルコが述べた事実にローは背中を押される。
それからは一言も話さなかった。アルコの処置を手早く終わらせたローの目には、もう迷いの色はなかった。
*
「最低でも1日は動かすなよ」
痛み止め注射の針先に集中しているロー。
「ありがとう」
ローは、仕上げとばかりに指の背を つつー…と足首に滑らせる。
「…その触り方…………やめてよ」
アルコは枕を抱いて、顔を埋めた。
「……………………」
ローが答えないので、アルコはおそるおそる顔をあげると、ローの顔が間近に迫っていた。
「医者に向かってやめろとは、いい度胸だな」
同じように人差し指の背でアルコのほほをこする。
「!!」
のけ反るように後ろに下がっても、ローは自信に満ちた表情を崩さない。