第7章 鏡
「アルコを乗せることに反対してるクルーがいる」
船長室でローと話をしていたペンギン。
アルコが処置室から出ていった音を確認してから、それまでしていた海軍の話を止めて、急にそう切り出した。
「おれの『個人的な事情』だ。『クルー』じゃねェ、『患者』と言やいいだろ」
「それでもあの強さだ。船を一撃で『ズバンッ』だぞ。あれじゃ、実質キャプテンに次いでこの船のNo.2になるし、警戒するのも無理ない」
「何が気に入らねェんだ、めんどくせェな。てめェが強くなれっつっとけ」
「ぐっ……。まぁ、そこは おれも悔しいんだから、わかってやってよ」
ペンギンもいくつかの死線をローと共にくぐり抜けてきたが、グランドラインに入ってからの化け物級の強さのヤツらに、無力感を感じはじめていたところだった。
しかしそこは、ローと付き合いの長いペンギン。ワンマンがちで言葉足らずのローに代わって、自分が船内のバランスを保つ役割をしなければならないことを彼はよくわかっている。
「首輪もまだ外してねェだろ。それでも文句あるのか」
「あぁ、それについても……」
「?」
ペンギンは言いにくそうに片目を細めて頭をかく。
「早く外せって言うヤツらもいる。とくにベポとジャンバールは毎日言ってるよ」
「はぁ~…………」
ローは深いため息をつき、ソファにどかっと座った。
「話せよ、キャプテン。全員に。『個人的な事情』」
ローは考え込んだ。
─── アルコが『珀鉛病』だということだけで話は済まないだろう。なぜ珀鉛病に拘るのか、自分の過去、『恩義』、ひいてはいつか対峙するつもりの『危険なあの男』にまで話題は及びかねない。
もともと『個人的な事情』には、クルーを危険にさらすつもりはないローは、ある提案をする。
「…………試す」
「え?」
「アルコにあえてスキを与えて、試す。危険かどうか、わかるだろ」
「逃げたら どうすんだ」
「その時は…………その時だ」
もし、逃げたら ───
ローは、いくら逃げても 自分のことをしつこく追い回し、連れ去り、あちこち引きずり回した『恩人』を思い出す。
─── その時は、その時だ