第27章 価値観
ユナは金縛りにあったように その場で立ちすくみ、困惑していた。よく見えない瞳をゆらゆらと泳がせながら、重なっているらしい二人の、激しく動き続けている部分をじっと見ていた。
「いけ」とか
「だせ」とか
そして脳を支配するクチャクチャという素早い水音とアルコの声
その声は
苦しそうなのに
なぜか 甘くて 魅力的
「ああぁッ! いゃっ…、で、ちゃ…ッッ!」
「ハァッ…、ハァッ、……出せ」
「────ッあぁっっ!!?」
絞り出すような絶叫が何度かあがった。
アルコのその声と同時に、パタパタと布に水が撒かれたような音が聞こえてくる。
ユナは熱い呼吸とともに身体を固くして少し力を抜く。無意識のうちにそれを繰り返していた。そうすると肌と衣類がわずかに擦れて、気が紛れるような気がしたからだ。求めているけど、求めてはいけないような刺激が。
いつの間にか着物の中の身体を揺らし、腰をもじもじと動かし始めた。
ベッドの上の二人が息を整えている気配がする。
出るって…、なにか出たの?
わたしも、もしかして何か出てるの?
熱い “ここ”が 熱い
何か出てるかもしれない
いや、何か出てる
どうしよう
どうしよう
助けて
「大丈夫か。少しは楽になったか」
安心感を導くその低い声の後、また水音が響く。
まるで自分なんてこの場にいないかのように、切なげな女の声が男の名前を呼んだ。
男は答えない。
変わりに今度はくちくちというような静かな水音と、その合間に息継ぎをするような音。その音が響く間は、二人は一切 会話をしなくなった。
「ん…、熱い…欲しいの」
その言葉を合図にしたかのように音は止み、衣擦れとベッドが大きく軋む音がした。