第26章 漂流
ひとしきり声をあげて泣いた後、アルコは顔をあげて、ローの胸元を見て笑った。血や涙や鼻水などの混ざった謎の液体が、胸のタトゥーを汚していた。
「ゴメン…、汚っ」
肘でごしごし擦(こす)るが、塗り広げているだけのような気もした。
「汚くねェよ」
ローはアルコの顔に張りついたガピガピの髪を剥がしてから、もう一度抱きしめた。今度は包むような優しい包容だった。
ドキドキする
身体が震えるほどに
息苦しいほどに
『ありがとう』と言われて
こんな風に抱きしめてくれて
辛かった ひとりぼっちの闘い
心が折れそうだった
それでも がんばれたのは
ローとこうして生きたいから
“負け”ないと信じたかったから
───────“神様”
胸が高鳴り、興奮で疲れと眠気が遠のいた。
そのままの体勢で、時が止まったように、二人はピクリとも動かない。
疲れきった手足を重ねたまま放り出していたが、そのうち“ひとつだけ”脈打つように動く“モノ”があった。
「………………」
「………しょうがねェだろ。本能だ」
疲れている時こそ
命懸けの時こそ
そういう反応を示すのは『生命の本能』だろうか
アルコはひとつ笑ってから、身体を潜らせて、魚網をかぶった。