第26章 漂流
“新世界”の航海は忙しい
快晴のち、どしゃ降り
キビレのち、海兎(うみうさぎ)
スパァッッ!!
・・・ザッ…パァン・・・
どしゃ降りの雨の中、立ちふさがる巨大で凶暴な海兎を、ローは一太刀で退けた。
「…なに やってんだ」
「糠(ぬか)漬け、洗ってる。食べるでしょ?」
アルコは「水がもったいない」と糠漬けの壺からきゅうりを取り出し、雨で糠を洗い落としていた。
「風邪ひくぞ、入ってろ」
「はーい」
とは言え、小さな船には船室などなく中央から数段 船底に降りれば、屋根の下に簡易の洗面室があるだけだ。
そこに こもる気にはなれないので、その入り口に飛び出た庇(ひさし)の下に身を寄せた。
手だけは出して、きゅうりを洗いながら。
ひと口サイズにカットして自分の口に入れてから、ローにも差し出した。
「おいしぃ~…!」
「ああ、うまいな。米もくれ」
洗面室に置いていた荷物から、おにぎりを取り出して海苔を巻いてから渡した。大雨を避けるように、狭い庇の下に身を寄せた二人。ローはもぐもぐとおにぎりを食べながら言った。
「魚も漬けてみろよ」
「あ、それいい! でも、不味い魚は入れたくない。さっきのキビレ、とりあえず食べてみないと」
糠床(ぬかどこ)は成長する。入れるもの、組み合わせによって味がどんどん変化していくのだ。アルコはもらった糠床を台無しにしたくなくて、慎重になっていた。
ここは“キビレ海流”とシルバーは呼んでいた。
時折、黄色い尾ビレの中型魚が群れで押し寄せる。船にぶつかってダメージが無いように気を張らなければならないが、群れが通りすぎる時は船もよく進むので、二人はキビレの群れを歓迎ムードで待ち望んでいた。
先ほど、ぶつかりそうだったキビレを、ローが能力で船内に引き上げたところだった。
しかし、雨がもう少し弱まらないことには、火起こしも調理もできない。