第4章 乗船【シャボンディ諸島】
「口で、します」
アルコは、両手のひらを前に出し、取り繕った笑顔で言った。
「めちゃくちゃ下手、とかではないと思います」
「…………」
どんなことでも する。
自分を守るためなら。
コツ、コツ、コツ……
男は真剣な顔でアルコの至近距離まで歩み寄り、アルコの顔の前に何かを見せつけた。
首輪の『お仕置きスイッチ』
ソレが何か理解した瞬間、アルコは男に殴りかかったが
パシッ
軽々と男に手首をつかまれる。
「ぐっ…!!」
振りほどこうと抵抗しても、びくともしない。
男はさらに近づき、首元のストールと破れたドレスを固定していた髪止めを外し、ぽいと床に捨てる。
グイッ
引っ張られたストールはふわりと床に落ち、首輪があらわになる。破れたドレスも少し時間をかけて ──
めくれた。
アルコは静かに目を閉じた。
細く、長く、ゆっくりと、息を吐いた。
っ──────
「!!!」
吐ききったと同時に目を大きく開き、残された左手で自分の首輪をつかむ。
力を入れる。
首と首輪のわずかな隙間に指が入った。
さらに力を入れる。
「やめろ!!」
男の持つ『スイッチ』が一瞬で長刀に入れ替わる。
ブウゥゥ……ン
ズバン!
ドサッ……
「はぁっ、はぁっ、…はっ」
倒れこんだアルコの前に、自分の左腕がありえない角度を向いているのに混乱した。しかし、よくみると曲がっているのではない。切り離されていたのだ。痛みがないことにますます混乱した。
男は真剣な顔のまま。
黒いドレスと同じ素材のロンググローブがはめられた左腕を持ち上げる。
「やめてっ!!!! お願い、します……」
アルコは土下座するような恰好で、額を床にこすりつけ、残った右手で床をかきむしる。固くつむった目には、涙が にじんだ。
男は、ゆっくりと
鞘から剣を抜くように
ロンググローブから腕を抜いた
素肌の腕には、
いくつもの 大きな白いアザが 現れた ────