第22章 Riot Grrrls
「お前の……アルコの父親は、どっかの知らねェ海賊だって言ってたな。生きてんじゃねェのか」
“お前”じゃなくて、わざわざ名前で呼び直してくれたことに気づく。
ささいなこと、だけど嬉しい
私達の『新しい』関係
「………………かもね。興味ないよ」
「なんでだ」
──── 父親だぞ
ローはそう言いかけて、やめた。
自分の中の父親の存在
父親との関係
目標にしていた
尊敬していた
それが、アルコにも当てはまるとは限らない
「興味ないって言うより、会いたくないかな。知りたくもない」
「なんでだ」
突っ込むね、と言ってアルコはコーヒーをすすり、さっぱりした笑顔を見せた。
「がっかりしたくない。
父親がミホークより『いい男』な可能性、低すぎるじゃない」
「はっ………。アルコらしいな」
しかし、同時にローは思う。
『ミホークの“本当の娘”である可能性は』
その黒髪
それに本当の“娘”でない女を、ここまで大事に想えるものなんだろうか
フレバンスから逃げるのに、母娘二人で本当に可能だったんだろうか
「フレバンスからはどうやって………」
そこまで口にして、ローはアルコがぼーっとして何かを考えているのに気づいた。
父親のことか
『興味ない』と言いつつ、『本当に興味がない』訳ではないのかもしれない
「え、何? ごめん」
「いや………」
──── まぁ………いいか
故郷から逃げた話は、話題が話題だけにどうしても暗い話になる
こんな いい朝には、もったいない
おれ達の『新しい』いい朝には
アルコも何かを察したようで、昔話を切り上げた。
「まぁ………少しずつ、だよね。その方が“面白ェ”し」
『お互い、知らないことが多いね』
『その方が面白ェだろ』
アルコは、すでに動き出しているシャボン玉の観覧車に向かって、目を細めた。