第21章 in the silence
宝石を売った金で、宿を取った。
長期滞在を覚悟して探した安宿は、ベッドしかない狭い部屋だった。ベッドが2つで部屋はギチギチになっていた。
思えば、ローとはしばらくセックスをしていなかった。
前にしたのは、もう1ヵ月以上前。胸のアザの治療の直前だった。
「ハートの形のアザが『好きだ』」と舌を這わされ、そのままの流れでセックスをしたのが最後だったか。
「消えてきてるな」
胸のアザを確認したローは、患部に触れることなく静かに言った。
(ローが『好きだ』って言ってくれたアザ………消えちゃうのか)
アルコがシュンとして下を向き胸の真ん中にある薄くなってきたアザを見ていると、ローが頭をノックするようにコン、と叩いた。
「ゾウって島、知ってるか」
「ゾウ?」
「島っていうか………ゾウらしいんだが」
「?」
「ベポの故郷だ。そこで落ち合う。だから、いつまでも しょげるな」
ローはクルー達と離ればなれになったことを気に病んでいると思ったようだ。
まさか、アザが消えちゃうことをがっかりしてるなんて、おかしいよね。
ローは、このアザを消すためにがんばってくれているっていうのに。
そうだ
もう、ローと自分しかいないんだ
優しいベポも、頼れるペンギンも、楽しいシャチも、話せるジャンバールも、クルーの皆達も
ふたりきり
ローに心配かけないように、ちゃんとコントロールしなくちゃ
自分がローを支えられるくらいに
アルコは一瞬 顔をしかめ、精一杯の笑顔でうなずいた。