第20章 宝物
帽子に手を添えて立ちあがり、尻をぱっぱっとはらった。
「本当にもう出航したの?
みんなにも今まで よくしてもらったのに、話もできず……
置いていかれちゃったんだ」
アルコは寂しそうにつぶやいた。
その言葉を聞いたローは、クルー達に下船を告げた時のことを思い出していた。
ベポに
ペンギンとシャチに
そしてクルー達全員に、下船することを告げた。
突然の話に、クルー達は困惑し、反対する者もいた。
決断自体には反対しなくとも、アルコに一言も相談なく、このまま何の挨拶もせず出航させることをほとんどのクルーが反対した。船内は驚きを通り越して不穏な雰囲気になった。
今まで船長として好き勝手やってきた。しかし、クルー達はローの好き勝手に進んでついてきた。ローの決断や選択に異論を唱えるような事態は、一度としてなかった。
ひょっとして この決断に対する反対は、自分にはとても抑えきれない、とローが思い始めた時、反対しなかったペンギンの一言で、その場はおさめられた。
『ローが、話すべきだ。
ローが直接、アルコと向き合うべきだ』
その言葉が、クルー達を納得させた。
アルコにこの伝言を伝えることを、条件に。
「伝言ならあるぞ」
アルコは驚き、ローをみるために帽子のつばをあげた。
それをみて、ローははっきりとした口調で言った。
「待ってる ──────
お前は
『仲間』だから
────── 待ってる」
アルコは溢れる涙をみられないようにするために、帽子を深くかぶり ローに背を向けて海へ向かって一歩だけ踏み出した。